研究内容

 

材料の”かたち”を制御して,機能を高める

金属材料やセラミックス材料の機能(力学特性,電気・熱伝導特性,磁気特性,etc.)を向上させるために,ミクロ・ナノスケールの微視組織(結晶粒,析出物,格子欠陥,etc.)を制御する研究が古くから行われており,現在においても材料研究の王道となっています.一方,材料に多様なスケール・形態の気孔を付与すると,衝撃吸収性,高比表面積,高熱交換性,吸音性などのユニークな性質を発現します.こうした材料はポーラス材料・多孔質材料などと呼ばれています.近年では3Dプリンティング(積層造形,付加製造)の発展により,材料の“かたち”を任意に制御可能となってきたことで,Architected Materialやメタマテリアルなどと呼ばれる新たな材料が創出されています.こうした材料では,上記の性質に加えて負のポアソン比や負の熱膨張率といった自然界にはない性質を生み出すことができます.そこで私たちの研究室では,高機能性をもつ新材料を生み出すために,ナノ,ミクロ,メゾ,マクロの多様なスケールで材料の“かたち”を制御する研究を行っています.
 

積層造形を活用した高機能形態創出

俗に3Dプリンティングと呼ばれる積層造形は,デザインした形状データをもとに材料を一層ずつ積み重ねることで目的の形状を生み出す加工法です.従来の加工法である,鋳造・鍛造(足し引きせずに形を変える)や切削(引き算の加工法)と比べて,材料を足していく(足し算の加工法)点が大きく異なります.その最大の利点は,従来の加工法で創製できなかった複雑な形状の材料を創製できることにあります.私たちの研究室では,積層造形を活用して新しい“かたち”を生み出すことで,材料の機能を高める研究を行っています.そのときには,結晶構造や自然界をヒントに“かたち”を設計したり,人工知能(AI)を活用して人間の思いつかない“かたち”を設計したりしています.
積層造形を活用した高機能形態創出
関連成果
 
 

階層的ポーラス構造の創製と制御

二種類以上の金属の合金から,電気的に卑な金属を取り除くことによって,ナノ・ミクロスケールの気孔を表面に付与することができます.ナノスケールの気孔は異材接合,超撥水(or 超親水),触媒活性など機能を生み出すサイトになります.一方で,ナノスケールの気孔は材料表面にしか付与できないため,活用できる面積に制限があります.そこで,連通したミクロスケールの気孔の壁面にナノスケールの気孔を付与することで,活用できる面積を拡大し,機能を向上させる研究を行っています.加えて,積層造形が生み出す複雑形状と組み合わせることで,ナノ,ミクロ,マクロの気孔からなる階層的ポーラス構造の創製を目指しています.
階層的ポーラス構造の創製と制御
関連成果
 
 

積層造形が生み出す人為的不均質組織の制御

金属積層造形で最も一般的な手法の一つは,レーザ粉末床溶融結合(Laser Powder Bed Fusion: L-PBF)法と呼ばれる方法です.この方法は,金属粉末の敷設とレーザによる局所的な溶融・凝固を繰り返すことで,三次元的な形状を創製します.一方,この方法ではレーザが照射されることで,材料の温度は局所的かつ不均一に上昇し,その後急速に冷却されます.この不均一な温度分布は材料内部の組織・物性に不均質性をもたらします.加えて,レーザを照射する条件(出力,走査速度)を変えることで,場所によって材料の組織・物性を制御することが可能です.私たちの研究室では,金属・複合材料を対象に積層造形が生み出す不均質組織の活用を目指した研究を展開しています.
積層造形が生み出す人為的不均質組織の制御
関連成果
 
 

新規粉末冶金プロセスの開発

粉末冶金(Powder Metallurgy)は,金属粉末の混合,混錬,成形,脱脂,焼結によって部材を作製するプロセスです.焼結は原料粉末の融点以下で行うプロセスで,原料の融解を伴うことなく,表面エネルギーを駆動力とした原子拡散によって粉末同士が結合し,緻密化が進行します.比較的低温でプロセスを完了できるために省エネルギーであることや,粉末の形状や配置によって材料の微視組織を制御可能である利点があります.私たちの研究室では,従来作製が困難であったダイヤモンド/金属複合材料やアルミニウム粉末焼結体の作製を可能とするプロセス開発を行っています.また,これらのプロセスをバインダージェッティング積層造形をはじめとする焼結型積層造形(Sinter-based additive manufacturing)と融合することによる形状付与を目指しています.本研究は産業技術総合研究所中部センターファインセラミックスセンターと連携するとともに,大型放射光施設(Spring-8)を活用した先端分析を用いて研究を推進しています.
新規粉末冶金プロセスの開発
関連成果