名古屋大学大学院工学研究科化学システム工学専攻伊藤孝至研究グループホームページ

研究内容

主な研究と特徴

 化石燃料である石炭,石油,天然ガス等の燃焼に伴う熱エネルギーから電気エネルギーへの変換効率を飛躍的に向上させることは,省エネルギーに大きく貢献するとともに,二酸化炭素などによる地球温暖化問題の解決にも寄与する全地球的緊急課題である.この課題の解決のためには,燃焼そのものの効率を向上させるためのシステムの構築と燃焼によって大気中にそのまま排出されてきた廃熱、排ガスの未利用低位エネルギーから電気エネルギーを限界に近い効率で変換できるシステムの構築およびそのための要素技術の研究開発が必要である.そこで本研究グループでは,各種システムから排出される廃熱から直接電気エネルギーに変換が可能な半導体材料である熱電材料に注目して,材料の高性能化と高効率な熱電発電システムの構築を目指して研究を行っている.
 各種システムで生じる廃熱において,高温廃熱(800℃以上)は,熱電発電以外にも蒸気タービンや燃料電池のための燃料改質への活用が可能である.それに対して,中温廃熱(300℃~600℃)は,主要な燃焼システムの廃熱であり,尚且つその活用が熱電発電にほぼ限定されるため,この温度域で高い性能を発現する熱電材料の開発と変換効率を極限まで向上させた熱電発電システムの開発が待望されている.そのため,本研究グループでは以下の研究テーマを設定して研究を行っている.

1.高性能熱電材料の開発と特性評価

 中温廃熱(300℃~600℃)から熱電発電を行うのに適した高性能各種熱電材料(非酸化物系)の開発を実施し,その性能を左右する特性の評価を行う.具体的には,Co-Sb系,Zn-Sb系,Ag-Sb-Te系,Mn-Si系,Mg-Si系の材料の合成をメカニカルアロイング法,パルス放電焼結法,液相-固相反応法などを組み合わせた手法で実施する.特に,環境に優しく豊富に存在する原材料から成るMg2SiやMnSi1.73などの環境共生型熱電材料に注目して合成を実施している.さらに,フラーレンやカーボンナノチューブなどのナノサイズ物質を熱電材料中に均一に分散させることでフォノン散乱に基づく熱伝導率低減による熱電材料の高性能化を図る.

2.熱電発電用モジュールの高性能化

 熱電発電で高効率化を図るためには,熱電材料の傾斜機能化が有望な方法の一つである.これは,各種熱電材料には,最良の熱電性能を発現する温度域がそれぞれあり,材料内部の温度分布に合わせて最良な熱電材料を組み合わせて,高温端と低温端の温度差を大きく取ることによって発電効率の向上を期待する方法である.この研究では,異種熱電材料の組み合わせの最適化を検討するとともに,異種熱電材料間の界面状態の観察やモジュール化した複合熱電材料の性能を評価する.

3.新規熱電モジュール製造法の開発

 熱電素子の切り出し,pn素子の配列,電極との接合,パッケージングといった煩雑な従来のモジュール製造工程を見直し,モジュール製造コストの低減,大量生産に適した新規のモジュール製造方法を提案し,それに基づいた熱電モジュールの開発を実施する.

4.高効率熱電発電システムの開発とその最適化

 既存の熱電モジュールや開発したモジュールを用いて熱電発電システムを開発する.中温(300℃~600℃)および低温廃熱(100℃~200℃)の熱媒体からの受熱の効率化を図り,熱損失を極力押さえることで熱電発電システムの最適化を検討する.