名古屋大学結晶成長工学研究グループ宇治原研究室

研究内容生体膜の構造を物理的に制御する

名古屋大学結晶成長工学研究グループ宇治原研究室

生体膜の構造を物理的に制御する
生体膜も相分離する。(金属材料と同じです。)
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細胞膜をはじめとする生体膜は、主に脂質分子と膜タンパク質で構成されています。 また、脂質分子はさまざまな種類からなる、いわゆる「多元系」である。 そのため、多元系金属合金と同じように「相分離」します。 下図の左は、合金の相分離構造、そして右は生体膜の相分離構造です。 その類似性は驚くべきものがあります。 最近の研究で、ラフト構造と呼ばれるコレステロールを含む相分離構造が、 膜タンパク質の膜内輸送の足場としての役割を果たしていることが明らかになっています。
(上図は、(左)合金の相分離構造(右)人工生体膜の相分離構造。よく似てます。下図は光照射により形成した相分離ドメイン)
物理的に相分離構造を形成・消滅(光照射によるアクティブパターニング)
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近年、固体基板上の人工生体膜の研究が盛んになされています。 たとえば、半導体上に形成することで、生体膜のセンサー機能と半導体を組みあわせた新しいバイオデバイスへの展開が考えられています。 固体基板上の人工生体膜の目標の一つに、パターニングがあります。 しかし、従来の研究では基板にパターニングを施し、それに沿って人工生体膜を形成するに過ぎず、 生物の「アクティブ」な性質が全く活用されていませんでした。 それに対して我々は、光や電界などを利用することで、外部からパターンの形成・消去・移動などを 自在におこなう手法を確立しました。
(図は、光照射によりドメインの形成と消滅を繰り返すことで、ドメイン位置を移動させた例。)
次の目標は「カタチ」
神経細胞や精子などは独特な線状の形状を有しており、その形状がこれらの機能と深く関係しています。 近年、人工脂質膜小胞を用いた実験で、親水基が負に帯電している脂質 (酸性リン脂質) にセプチンという蛋白質が選択的に吸着し、膜の曲率を変化させ、チューブ状の構造を形成することが明らかとなっています。 我々のグループでは、光励起や電界印加によって固体基板上の平面脂質膜のドメインを制御することに成功しており、 膜の任意の領域に酸性リン脂質のドメインを形成させ、そこにセプチンを加えることで、その領域を意図的に変形させることができないか、と考えています。
実験装置とメンバー
名古屋大学結晶成長工学研究グループ宇治原研究室 蛍光顕微鏡(その向こうは顕微FTIR)
名古屋大学結晶成長工学研究グループ宇治原研究室 AFM
名古屋大学結晶成長工学研究グループ宇治原研究室 メンバー

研究一覧

世界最高品質を目指すSiC(シリコンカーバイド)溶液成長

第三世代太陽電池を支える量子構造の物性を解明する

「熱」を自在に操るための材料探索(省エネルギー変換材料)

生体膜の構造を物理的に制御する

結晶成長の観点から空気電池に切り込む